診療科・部門

整形外科

人工関節

変形性関節症

変形性関節症は関節の軟骨がすり減り変形・痛みを引き起こす病気で、QOL(生活の質)や健康寿命を低下させる大きな一因となっています。

当院では患者さんに治療の選択肢をご提案し、変形の進行度、年齢、活動度にあわせて最適な方法を一緒に考えます。症状が軽度の場合は運動療法・薬物療法・装具・注射などの保存療法を行いますが、改善ない場合は手術という選択肢もあります。

手術の方法は複数あり、メリット・デメリットを十分比較・検討した上で選択します。単純な変形性関節症だけでなく骨壊死、関節リウマチ、骨折なども対象になります。

膝・股関節ともに術後早期にリハビリを開始し、入院期間の目安は片側でおおよそ2〜3週間です。

高位脛骨骨切り術(HTO)

脛の骨を切ってプレート・スクリューで固定し、O脚を矯正する手術です。
対象は変形が関節の内側のみの方に限られますが、自分の骨を残すことができ、比較的若年の活動度が高い方によい適応があります。スポーツに復帰される方もいます。

人工膝関節単顆置換術(UKA)

痛んでいる関節の片側だけ骨を削り金属に入れ替える手術です。
全置換術に比べ違和感が少なく可動域も保たれますが、手術を行うには変形が軽度、痛みが片側に限局している、膝の靭帯が残っているなどの条件を満たす必要があります。

人工膝関節全置換術(TKA)

関節の内外側両側とも骨を削り金属に入れ替える手術で、変形が進行している場合に適応となります。
日本では年間約8万件行われる成績の安定した手術で、材質の改善により現在のインプラントの寿命は20〜30年ほどと言われています。

主な対象疾患

変形性膝関節症

日本国内の変形性膝関節症患者の数は自覚症状のある方が約1,000万人、自覚症状のない方も含めると約3,000万人で、男女比は1:4です。明らかな原因はわかっていませんが、加齢、肥満、体型、筋力、職業、遺伝などが関係すると考えられています。

大腿骨内顆骨壊死

大腿骨の内側が血流不足になり壊死する病気です。
50歳以上に多く原因は不明ですが、ステロイドの大量使用、骨粗鬆症、外傷などが関連しているといわれています。

関節リウマチ

免疫の異常により関節に炎症が起き、腫れや痛みを生じる病気です。
進行すると関節の変形を来し、膝の場合X脚となることが多いです。

人工股関節置換術(THA)

変形した関節の骨盤側(臼蓋)を削って受け皿となるカップを固定し、大腿骨の一部を切除後ステムという金属を入れて股関節を金属に入れ替える手術です。

人工股関節置換術後の大きな合併症の一つに特定の姿勢をとると関節が外れてしまう脱臼がありますが、当院では筋腱を切離せず侵襲の少ない前方アプローチで行っているためリスクは非常に低く、術後の姿勢について制限を設けることは基本的にありません。低侵襲の前方アプローチは術後の痛みの軽減や筋力の回復にも有利とされています。

主な対象疾患

変形性股関節症

日本国内で変形性股関節症患者の数は120~510万人で、9割が女性です。生まれつき股関節の骨盤側の受け皿(臼蓋)の被りが浅い臼蓋形成不全が主な原因です。

大腿骨頭壊死

大腿骨の先端の骨頭が血流不足になり壊死する病気です。
30〜60代に多く膝と同様原因は不明ですが、ステロイドの大量使用、アルコールの大量摂取、外傷などが関連しているといわれています。

関節リウマチ

膝と同様に股関節にも変形を来す場合があります。

大腿骨頚部骨折

大腿骨近位部の首の部分(頚部)が折れる高齢者に多い骨折です。
高齢の場合はより侵襲の低い人工骨頭挿入術が選択される場合もありますが、除痛効果は人工股関節置換術のほうが高く、比較的若年で活動性の高い患者さんに適応になります。

当院の特長:ナビゲーションシステムを用いた手術

人工関節術後長期で良好な結果を得るには、インプラントを目標とする位置に正確に設置することが重要です。
しかし術者の経験に頼った従来の手術では術者間でのばらつきが大きく、また熟練した術者でも全例を目標通りに手術するのは不可能でした。
当院では膝関節・股関節ともにナビゲーションシステムを使用し、安全・正確に人工関節手術を行っています。
骨にアンテナを立ててコンピューターに位置情報を読み込ませることで、骨を切る位置やインプラントの設置位置が手術中リアルタイムで表示されます。

リバース型人工肩関節置換術(RSA)

解剖学的な肩の関節を反転させた肩甲骨側が球形、上腕骨側が受け皿の構造の人工関節で、断裂などで腱板が機能しない場合でも三角筋の力のみで肩を上げることができます。
基本的に65歳以上が対象となります。

主な対象疾患

変形性肩関節症

高齢の女性に多く、加齢による一次性の変形と腱板断裂や骨折後に起きる二次性の変形があります。

広範囲腱板断裂

肩を動かす筋肉である腱板が断裂し手術が必要な場合、内視鏡下で骨にアンカーを打ち込み糸で腱板を縫い付ける鏡視下腱板修復術(ARCR)選択されることが多いです。しかし断裂が広範囲で腱板の修復が困難な場合、三角筋の力のみで肩を上げることができるRSAが適応となります。

上腕骨近位端粉砕骨折

骨折部の粉砕が強くプレートやスクリューでの固定が困難な場合に適応となります。