


腰痛、下肢痛やしびれ、手のしびれ、頚部痛、肩こりなどの症状で医療機関を受診して症状が軽減せず他の医療機関を受診したという方も多いと思われます。そのような場合、医者によって診断が違うという経験が多いかと思われます。
なぜそのようなことが生じるのでしょうか?それは診断をしたり説明をするときに、症状から考えるか、画像検査(レントゲンやMRI)の結果から考えるかということで異なってきます。


症状から診断をつけると下記のような診断名が考えられますが、患者さんの訴える症状(主観的な症状)から判断した場合と客観的な症状から判断した場合とで異なります。




たとえば、腰椎椎間板ヘルニアにより腰痛と足のしびれの症状がある患者さんに診断をつけるとすると、画像検査では腰椎椎間板ヘルニアとなり、神経障害に視点を置く腰部神経根症となり、殿部から足へ響く痛みに注目すると坐骨神経痛となり、腰痛に注目すると腰痛症ということになります。
同じ患者さんに対して視点を変えて診断名をつけているだけですので、どれを取っても間違いではありません。そのような複雑な状況を整理してひとつの概念で診断を統一できないものかと思われるかもしれませんが、ヘルニアがあっても腰痛がある人とない人がいる、腰痛があってもヘルニアがある人とない人がいる、坐骨神経痛と思われる症状の訴えがあっても神経障害がある人とない人がいるという状況では、ひとつの基準で診断をすることは不可能であると思われます。
しかし、その中で重要視するべき基準は患者さんが一番困っている症状や患者さん自身は気付いていないような神経障害の症状ではないかと思います。そう思って上記のような患者さんに「あなたの診断名は腰痛症と坐骨神経痛です。」と説明しても、患者さんはなかなか納得してくれず、「レントゲンやMRIをして椎間板ヘルニアがありますね。」と言った方が説得力があるかと思われます。そのようなことから、腰痛症の患者さんに対して椎間板ヘルニアという診断名がついていくのではないかと思われます。


脊椎疾患に関してはどのような観点で診断名をつけるかということで表現が違ってきます。
すなわち診断名が変わるということです。
わたしも外来で“診断名は何ですか?”とよく患者さんから問われますが、脊椎疾患に関しては診断名そのものだけで病態を表現することは難しいので、診断名にこだわるのではなく、どういった状態なのかということを把握することが大切であると思います。
このようなことから別の医療機関を受診したときに異なった診断名を言われることもあると思います。それは前の医師が間違った診断をしたわけではなく表現が違うだけなのです。ひとつの診断名で患者さんの病態を表現することは困難なのです。