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脊椎の専門家向け

The 1st Tokushukai-Yokota Air Base Medical Liaison Conferenceを開催

2009年4月から年に2回の予定で横田基地内の病院の先生方とのカンファレンスをしています.その様子を報告します.4月10日は当院で施行しました.同年10月30日は横田基地内で施行しました.次回は今年5月に予定しています.

2009年4月10日,Tokushukai-Yokota Air Base Medical Liaison Conferenceと銘打った会議の第1回を開催しました.Liaisonとは連絡,架け橋といった意味で,この会議の名称は徳洲会病院と横田空軍基地病院との医療連絡会議を意味しています.横田基地には住人が1万人ほどいて病院もありますが設備としては中小病院程度です.東京西徳洲会病院は横田基地に隣接していることから横田基地の病院ではできないMRI検査などを施行していました.
2008年7月に湯澤が東京西徳洲会病院に赴任し,とある機会に横田基地と連絡を取っている当院のメディカルコーディネーターと話をしていてこんな話を聞きました.横田基地には整形外科の医師がいて診療をしているが,脊椎疾患については以前は輸送機で沖縄やハワイへ行っていた.最近では予算削減のため立川災害医療センターや亀田総合病院へ行っている.しかし,国内の病院を受診するときは通訳が必要で,通訳は医学のことをそれほど理解できるわけではないので,ちゃんとした説明も受けられない,とのことでした.そこで軽い気持ちで「まあ,つたない英語ですが,脊椎の患者さんくらいは診ることができますよ.」と言ったところ,「本当ですか? それはとても喜ばれると思います!」と言われ,7月下旬には横田基地のメディカルコーディネーターと面会して患者さんを受けることになり,その後私の外来に横田基地の患者さんが来るようになりました.8月19日には横田基地病院へ見学に行きました.横田基地内に入るのにはパスポートが必要であるといわれて少し驚きました.基地の病院では3人の整形外科の先生と会って院内を案内していただきました.3人とも30才代~40才ちょっと位の医者で,その病院に固定ではなく3年くらいでローテーションをしているとのことでした.私が脊椎疾患の患者さんを診療していることにとても感謝していただきました.
その後は私が外来に出るたびに横田基地から2,3人の患者さんが紹介され,日本語を話せないので英語で診療をしなければならず,よい英会話の練習になっています.手術も腰椎除圧術2人,MED2人,腰椎後方固定術2人,頚椎前方除圧固定術2人施行しました.先日は横田基地の軍人さんが交通事故で受傷して多発外傷疑いで3次救急病院へ搬送されてハングマン骨折と脛骨高原骨折と診断を受けたものの,言語的な問題があって当院へ転送されてきました.初診をした病院ではどういうわけかほとんど何の処置もされないまま5日間入院していて,当院でハローベストを装着すると患者さんは首の痛みがらくになったと言ってとても喜ばれました.頚椎椎間板ヘルニアで脊髄症をきたしていて前方除圧固定術予定の患者さんは空軍のパイロットであり,術後に飛行が可能であるかということをflight medicine specialistが判断するとのことでした.flight medicine specialistという職業の人がいることに驚きました.ジェット機を操縦するパイロットに対する評価の専門家がいてもおかしくはないのかも知れません.そのような患者さんを私が手術をしてよいものかという感じもしますが,術式は頚椎の骨性終板を残して椎間板とヘルニアだけを切除して,骨性終板と椎体に噛み込むスレッドケージで固定する方法を予定しています.この手術を相澤病院の時から数えると30例以上はしていると思いますが,術直後から頚椎カラーもせずに自由に動いていてもらって今のところ特に問題がないので,通常の生活には支障がないでしょうと横田基地病院の整形の先生には伝えました.ジェット機の発進時にどの程度のGがかかるかは知りませんし,そのようなGがかかったときに頚椎がどうなるかは想像ができません.flight medicine specialistが判断してくれるのだと思います.
以前相澤病院整形で働いていたこともあり,今は東京西徳洲会病院で私と一緒に働いている整形外科の北川寛之先生も横田基地病院からかなり患者さんを受けて診療していますし,外来や病棟のスタッフも協力的で,がんばって英語で対応してくれています.12月には横田基地病院のクリスマスパーティーに招待していただきました.恐らく一番いい席だろうと思われるテーブルに席を用意していただいて恐縮しました.日本の忘年会の出し物やゲームでは皆さん恥ずかしながらしている印象を受けますが,アメリカ人は出し物やゲームに対して本気で,女の人は着飾ったドレスでドタバタのゲームに興じていて驚きました.絵に書いたようなアメリカンなクリスマスパーティーで楽しい時間を過ごすことができました.
そのような経過から医療カンファレンスを開催しようと思いつきました.その目的を①横田基地を始めとする米軍医療機関と米軍基地に関連した患者の医療に携わる医療機関との友好を深める,②米軍基地に関連した患者に対する医療問題について話し合う,③日米の医療に関する相違点についても言及する,というものにしました.会議の名称をどうしたらよいか悩みましたが,元東大小児外科教授で当院総長の橋都浩平先生に相談してLiaisonというすてきな単語を提案していただいて会の名称が決まりました.また,第1回の特別講演には信州大学整形外科加藤博之教授においでいただきたいと思いましてお願いしたところ快諾をいただきました.
 2009年4月10日にその第1回が開催されましたが,会議の趣旨からしてofficial languageを英語として板垣徹也院長の開会の挨拶で会を始めました.一般演題の座長は北川寛之にお願いしました.一般演題1席目はLt Col Eric Nelson, MD, MPH Chief, Aeromedical Services(航空医療)が「Battlefield Trauma & the U.S. Aeromedical Evacuation System」という演題名で戦場で負傷した兵士に対する処置方法や航空機を用いた患者搬送について発表しました.負傷した兵士のファーストエイドをするのは他の兵士であるということで,考えてみれば当たり前ですが兵士は医療の教育も受けるのだなあと少し驚きでした.また,患者搬送システムと治療後のケア(特に切断肢の患者など)が整っていることに驚きました.2席目はAndrew Ebert, Capt, USAF, MC, Orthopedic Surgeon (整形外科)が「Expeditionary Medical Support (EMEDS)」という演題名で病院機能を持った施設を空輸して設置するシステムについて発表しました.対象人口3000-5000人で病院機能を持った25ベッドの施設を7日で設置できるということには驚きました.3席目は湯澤が「The Patients of USAF Yokota with Spine Disease」という演題名で横田空軍基地病院から東京西徳洲会病院脊椎センターへ紹介された患者について発表しました(写真1).特別講演は加藤教授に「Treatment for Capitellar Osteochondritis Dissecans (COCD)」という演題名で講演していただきました. 加藤先生の講演には質疑応答が何件もあり活発なディスカッションが繰り広げられました(写真2).会全体にわたってもたいへん活発なディスカッションが行なわれ大盛況でした.最後に橋都浩平東京西徳洲会病院総長の閉会の言葉によって会が閉じられました.
 アメリカ人の患者さんの診察をしてみて,興味深いことが何点かありました.この会の私の一般演題でも話題にさせていただきましたが,まずひとつめは,例えば慢性腰痛症でMRIでは椎間板変性がかなりあって腰椎椎間板症と診断してよい患者さんがいたとします.そのような患者さんに椎体間固定術をした場合,さまざまな報告によるとおおまかには3分の2(約66%)の患者さんは手術結果に満足するが,3分の1(約33%)の患者さんは手術結果に満足しないということのようです.そのことを説明すると,アメリカ人の患者のほとんどは「私はそのチャンスにかけてみたい!」と言います.それに対して日本人の患者さんは「やっぱり100%じゃないんですね.であれば手術を受けるのは考えさせていただきます.」(はっきり言わないが,真意は手術は受けたくないということだろう)という返事であります.全員がそのような返事であるというわけではないですが,そのような傾向が顕著にあり興味深いところです.人口が日本の約2倍であるアメリカで脊椎固定術が日本の約10倍行なわれているそうですが,このようなこともその現象の一因であるような気がします.
 また,アメリカ人はあまりにも痛みに弱くて驚きます.われわれ日本人の感覚からすると異常と思われるほどです.仙骨部硬膜外ブロックをして針の刺入をたいへんに痛がる日本人はそれほどいないと思います.痛覚としてはやや鈍感そうなところですし,それほど太い針でもありません.アメリカ人の場合は針先が触れると痛みを避けようとして動いてしまうため結局ブロックを出来なかった人もいたくらいです.そのため腰椎硬膜外ブロックなどは危なくてとてもできたものではありません.(例外はありますが)先日はメディカルコーディネーターからFAXがあり,椎間関節ブロックは可能か?その際にセデーションをしてもらいたいが可能か?という内容で驚きました.アメリカ人の痛覚の域値が実際に低いのか,あるいは日本人は痛がることが恥と教えられてきたという文化的な差異か不明であります.
 この会の開催後,日米の医師からも横田基地と徳洲会のスタッフからもこのような会が開催されてとてもよかったという声を多く聞きました.今後,年に2回程度の割合で開催していこうと考えています.また,私の脊椎疾患に対する診療について考えると,アメリカでアクティブに診療していた医師から次々と患者さんが紹介されるということは,アメリカでのスタンダード,ということは世界スタンダードとして遜色がない程度の治療はできているのかなという認識を持たせていただきました.今後は横田基地だけでなく,この近隣にも脊椎疾患を持ちながら言語の障害で困っている患者さんは多くいると思いますので,病院のサイトなどを通じてそのような患者さんにも当院を認知してもらえるようにしたいと思います.

図1.発表後,横田基地病院整形外科医師の質問に答える湯澤

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図2. 講演後,横田基地病院放射線科医師の質問に答える加藤教授

写真2.gif

投稿者:脊椎センター長|2010/02/08|14:02


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